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最高裁判所第一小法廷 昭和27年(オ)628号 判決 1957年2月21日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

第一点について。

原判決は、その挙示する証拠により判示各事実を認定した上、上告人らが訴外伊藤由吉から本件土地を買受けたのは昭和二一年以後の事であつて本件遡及買収の基準である昭和二〇年一一月二三日以前でないものと見るのが妥当であるとし、右に反する所論甲第五号証の記載内容及び所論証人の供述はいずれもこれを措信し難いものとして排斥したものであることは原判文上明らかであり叙上証拠に徴すればそのような判断ができないものでもない。所論は畢竟原審がその専権に属する証拠の自由な判断により為した事実認定の当否を云為するだけのものである。

第二点について。

原判決は、その挙示する証拠に基いて本件土地について地主伊藤由吉と賃貸借契約をしたのは、志子田長治であり、その同居の子宇三郎(本件買収計画の申請人)ではないが長治は老齢の為め昭和一九年以来本件農地を含めた農耕は勿論主食の供出、世帯の切回し等一切宇三郎に任せ自分は多忙の折宇三郎の手伝をする程度である等の事実を認定した上、以上の事実よりして本件土地につき実際に耕作を主宰した者は宇三郎であり、地主伊藤由吉もこれを了承していたものと認め、このような地位に在る者は自創法六条の二にいわゆる小作地に就き耕作の業務を営んでいた小作農に該当するものと解すべきであると説示したものであることは原判文上明らかであり当裁判所も右判断を正当と認める。所論は右にいわゆる耕作を営むとの意義を厳格に解釈すべきものとし本件において右長治が老齢とは言え家長である限り隠居等の為め家政一切を右宇三郎に任せない以上は宇三郎は右にいわゆる小作農に該当しないものであると主張するが、原判決の上叙説示のような場合にあつては右にいわゆる耕作の業務を営む者の中に宇三郎のような地位に在るものをも含包するものと解して差支ない。

第三点について。

その他の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号ないし三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものとも認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、九三条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎)

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